イザベル・ユペールが好きだ。
妖艶な立ち居振る舞いのさなかに
忽然とあらわれる可憐な微笑み。
威嚇と誘惑をマルチタスクする瞳、
もしくは舞台を終えた操り人形が
いつもの指定位置に腰かけ、
己の惨めな人生を憂うために
こしらえた冷たい瞳。
ブロンドにも赤毛にも茶髪にも
染まる艷やかな髪の毛に、
トレードマークの凛々しいエラ顎。
大きめの顔に相反する華奢な図体の
端々には、そばかすが密集し、
年齢不詳の無邪気な輝きを放つ。
『ポルトガル、夏の終わり』では、
世界遺産の町・シントラを歩く
彼女の姿を観ることができる。
人生の、有終の美を象徴したラストシーン
が美しい。蒼穹のひろがりを映すも、
それよりも遥かに脳裏に焼きつくのは、
空をつんざく鼻尖、屹立する女性の背中、
私の大好きなイザベル・ユペールだった。
そして、日本を歩く彼女を観ても、
やはりこの思慕に変わりはない。
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