【社会派ドラマ】特集 悲劇にみる人間の輝き【銃乱射事件】

「悲劇にみる人間の輝き」と題しまして、おすすめ映画を4つ特集した記事となります。

なんの悲劇かと申しますと、”銃乱射事件”。
実際に起きた銃乱射事件を題材とした映画で、私が推したいものを集めました。物語がショッキングな内容になりますので、腰を据えて鑑賞する必要があるかと思いますが、それだけに真に迫る映画体験ができます。

長回しショットや特徴的なカメラワークなどの映像表現が工夫されており、斬新な演出が顕著な作品で揃いました。同じ題材であっても制作者の意図や切り口の違いで、無尽蔵に映画というものは多様化するということに気づかされます。

人間の「生」や「死」についてを扱ったチョー真面目な映画になります。そういうのが好き!って方はぜひ参考にしていただければと思います。

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『エレファント』

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あらすじ・解説

99年のコロンバイン高校での銃乱射事件を、初期には「ドラッグストア・カウボーイ」や「マイ・プライベート・アイダホ」を撮っていた「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のガス・バン・サント監督が描く。撮影は「裏切り者」「ゲーム」のハリス・サヴィデス。生徒役の出演者はみな俳優ではなく実際の高校生で、セリフは彼らが即興で話すという演出。03年のカンヌ映画祭でパルムドールと監督賞を史上初のダブル受賞。

映画.com

執筆者memo

娯楽映画のみならず、アート系や社会派な作品にふれはじめた高校生のころの私に衝撃を与えた映画です。映像表現の工夫がいかに映画の可能性を広げゆくものなのかということを今作で実感しました。

特徴としては”群像劇”とするためのカメラワークや編集の斬新さでしょう。

複数の人物の視点から物語を構成することで、リアルな高校生活を切り取ります。そして銃乱射事件をも、そのリアルの延長として描くことで、映しだされているものが観者の生活と地続きな社会での出来事だということを訴えかける機能を果たしています。演者を俳優ではなく実際の高校生を起用している点もリアリズムに寄与しております。

リアルな高校生活を描くために長回しショットの撮影技法を用いているのも特徴的です。省いてもよいであろう人物の言動を敢えてとらえることで”日常の無意味さ”が表現され、「”いわゆる映画”的な映画」で描かれるようなドラマチックな要素が徹底して排除されています。”日常の無意味”がむしろリアルという虚無感が映画全体を包んでいる感じです。

そのためか終盤に描かれる銃乱射事件という悲劇が、「まぁ確かにあってもおかしくはないよな」と感じてしまうことの恐怖が際立つんですね。

81分の観やすい映画でありながら、映像表現の工夫が冴えわたる素敵な作品です。

詳しくはこちらの記事にしたためています
【映画】『エレファント』「死」に収斂されゆく”日常”【ガス・ヴァン・サント監督作品】

詳細情報

原題:Elephant
監督:ガス・ヴァン・サント
脚本:ガス・ヴァン・サント
出演:ジョン・ロビンソン
   アレックス・フロスト
   エリック・デューレン
制作年:2003年
制作国:アメリカ
時間:81分

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『ウトヤ島、7月22日』

Copyright (C) 2018 Paradox

解説

2011年7月22日にノルウェーのウトヤ島で起こった無差別銃乱射事件を、生存者の証言に基づき映画化。97分間の本編のうち、事件の発生から収束までの72分間をワンカットで描いた。11年7月22日、ノルウェーの首都オスロの政府庁舎前で車に仕掛けられていた爆弾が爆発する。世間が混乱する中、オスロから40キロ離れたウトヤ島で今度は銃乱射事件が起こり、同地でノルウェー労働党青年部のサマーキャンプに参加してた10~20代の若者たちが犠牲になった。犯人は32歳のノルウェー人のアンネシュ・ベーリング・ブレイビクという男で、極右思想の持ち主であるブレイビグは、政府の移民政策に不満を抱きテロを計画。政府庁舎前の爆弾で8人、ウトヤ島の銃乱射で69人と、単独犯としては史上最多となる77人の命を奪った。映画は同テロ事件のうちウトヤ島での惨劇に焦点を当て、サマーキャンプに参加していた主人公の少女カヤの視点から、事件に巻き込まれた若者たちが恐怖や絶望の中で必死に生き抜こうとする姿をリアリズムたっぷりに描いた。監督は「ヒトラーに屈しなかった国王」「おやすみなさいを言いたくて」のエリック・ポッペ。18年・第68回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品。

映画.com

執筆者memo

今作で特筆すべきは全編ワンカットで構成された映画ということです。

銃乱射事件の被害に遭う若者たちが逃げ回るさまをワンカットで表情ひとつ取りこぼさずに映すことで、あたかも観者もその現場に立ち会っているかのような感覚に陥ります。この没入感を体感できるのが今作の魅力。

犯人がほぼ描かれることなく、被害者のみにフォーカスされています。”恐怖”と対峙する若者を生々しく描写することで銃乱射事件そのものの凄惨さが伝わってきます。

しかし、そんな状況にありながら、ある人物によって口ずさまれるシンディ・ローパーの楽曲「トゥルーカラーズ」が尊い。

「死」をまえにしてこそ輝く「生」。

生きていることの美しさ、生きていくことの力強さを与えてくれる映画であるとも思います。

詳しくはこちらの記事にしたためています
【映画】『ウトヤ島、7月22日』ただ、銃声と悲鳴だけが【エリック・ポッペ監督作品】

詳細情報

原題:Utoya 22. juli
監督:エリック・ポッペ
脚本:シブ・ラジェンドラム・エリアセン
   アンナ・バッヘ=ビーク
出演:アンドレア・バーンツェン
   エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン
   アレクサンデル・ホルメン
制作年:2018年
制作国:ノルウェー
時間:97分

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『7月22日』

©2018 Netflix US,LLC and Netflix International, LLC. All Right Reserved.

あらすじ・解説

「ジェイソン・ボーン」「ユナイテッド93」のポール・グリーングラス監督が、2011年7月22日に起こったノルウェー連続テロ事件を題材に描いた実録ドラマ。単独犯としては史上最多となる77人の命を奪った実行犯のアンネシュ・ベーリング・ブレイビクが逮捕後に獄中や裁判で繰り出した発言や、テロ事件の被害者となった若者とその家族たちが苦悩しながらも、心の拠り所と正義を求めて歩み始めるまでの姿も描いた。11年7月22日、極右思想を持ったノルウェー人のブレイビクが首都オスロの政府庁舎前で爆弾を爆破させて8人を殺害。さらに労働党青年部のサマーキャンプが行われていたウトヤ島で無差別に銃を乱射し、69人の命を奪った。ウトヤ島でブレイビクの凶弾に倒れた少年ビリヤルは、九死に一生を得るが、脳に銃弾の破片が残ったままで、以前のように自由も利かない体になってしまい、苦悶の日々を送る。やがて世間ではブレイビクの裁判が始まり……。18年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。Netflixで2018年10月10日から配信。

映画.com

執筆者memo

こちらも上記しました『ウトヤ島、7月22日』と同じ銃乱射事件を題材とした作品です。

違いとしては、今作でメインに描かれているのが銃乱射事件そのものではなく、その後の話だということ。被害者や実行犯、その周りの人物が悲劇的な事件を経てどう変化してしまったのかを俯瞰的にみていく物語となっております。ですのでより社会派ドラマのていを成しています。

具体的には
・被害者のPTSD
・被害者家族のかかわり
・実行犯の動機
・政府のうごき
などなどをじっくり追っていく感じです。

内容を1フレーズにするとすれば
「銃乱射という非倫理的な暴力の実行による”変化の強制”がもたらす悲劇」でしょうか。

実行犯のテロを発端に被害者をはじめとした社会全体がどう対峙していくのかが扱われており、社会へ暴力を持ち込むことの悲劇がうまく表現されています。

ただ、その暴力をも乗り越えるだけの「”感情”のつながり」を本作をとおして感じることができます。

詳しくはこちらの記事にしたためています
【映画】『7月22日』思想を凌駕する”感情”【ポール・グリーングラス監督作品】

詳細情報

原題:22 July
監督:ポール・グリーングラス
脚本:ポール・グリーングラス
出演:ヨナス・ストラン・グラブリ
   アンデルシュ・ダニエルセン・リー
制作年:2018年
制作国:ノルウェー
    アイスランド
    アメリカ
時間:144分

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『静かなる叫び』

(C)2008 RP POLYTECHNIQUE PRODUCTIONS INC.

あらすじ・解説

「プリズナーズ」「ボーダーライン」などを手がけ、「ブレードランナー」続編のメガホンも託されるなど、ハリウッドで注目を集める気鋭監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが2009年に故郷カナダで手がけた作品で、モントリオール理工科大学で実際に起きた銃乱射事件をモチーフに描いた社会派ドラマ。1989年12月6日、モントリオール理工科大学に通う女子学生ヴァレリーと友人の男子学生ジャン=フランソワは、いつも通りの1日を送っていた。しかし突然、1人の男子学生がライフル銃を携えて構内に乱入し、女子学生だけを狙って次々と発砲を開始。犯人は14人もの女子学生を殺害し、自らも命を断つ。ヴァレリーは重傷を負ったものの何とか生還し、ジャン=フランソワは負傷した女子学生を救う。それぞれ心に深い傷を負った2人は、その後も続く非日常の中で苦悩にさいなまれるが……。

映画.com(一部修正)

執筆者memo

私の好きな映画のなかでも指折りな作品『静かなる叫び』。

監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。”荘厳”という言葉が思い起こされるような映画が多く、人間の普遍的に内在する気高く美しいものが表象される点が共通項だと感じます。

物語はおもに3人の人物の視点から語られていき、彼らの想いを描写していきます。

ある人は、憎悪を。
ある人は、悲哀を。
ある人は、希望を。

彼らの湛える想いが、「瞳」をとおして伝わってきます。

美しいです、ただただ美しい。

美しさの訳は、この物語から希望を感じることができるから。人間が”恐怖”に苛まれ、人生が陰りはじめたとしても、私たちは絶えず”勇気”を湛え、未来に向けて生きることを選択できる。憎悪に朽ち、悲哀に呑まれることがあったとしても、肌をさす木漏れ日の温もりに私たちは希望を思い出す。

「希望」を感じたい人には、ぜひ鑑賞していただきたい作品です。

詳しくはこちらの記事にしたためています
【映画】『静かなる叫び』その瞳のさきに【ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品】

詳細情報

原題:Polytechnique
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
   ジャック・ダビット
出演:マキシム・ゴーデッド
   セバスティアン・ユベルドー
   カリーヌ・バナッス
   エブリーヌ・ブロシュ
制作年:2009年
制作国:カナダ
時間:77分

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まとめ

銃乱射事件という重い題材を扱った映画になりますので、たいへん体力を要する映画4選となりました。ですが、この重さは人生の偉大さにつながるのではないでしょうか。「死」をもってして「生」が輝く。

悲劇にみる人間の輝き。

いまを生きる私たちに、
この輝きは欠かせません。

ここまで読んでいただき、
ありがとうございました。

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