評価に踊らされた社会で、君は笑えるか
NetflixやAmazonプライムビデオなどのVODを利用しはじめてからというもの、映画のみならず海外ドラマにも魅了されている今日この頃です。ドラマやアニメが一気に観れるというのもVODの魅力ですね。
さて、今回はNetflixオリジナルドラマ『ブラックミラー』のなかから、私が一番感銘をうけた物語をとりあげます。
『ブラックミラー』はイギリス版 世にも奇妙な物語×SF といった感じの一話完結のアンソロジー作品となっております。近未来を風刺していて、ほぼほぼの物語がバッドエンドで後味が悪いです。しかし、味があるのは確かで、妙に記憶に残る、メッセージ性の強い作品群がせいぞろいしております。
そんな『ブラックミラー』のなかで、例に漏れたハッピーエンドな物語(私的)をピックアップ!season3 episode1『ランク社会』ですね。原題は Nosedive で意味は、急落する、いきおいが急激に衰える…という意味です。
では、感想を記していきます。
(※ネタばれ含みます)
物語の世界観
”いいね!”を得るために、個人情報を晒す現代社会。そんな社会の成れの果ての世界を描いたのが、今作の世界観です。
あるSNSの評価によって、個人がランク付けされ、その順位により、個人のあらゆる選択に影響が及ぶ、ときにそれは個人の尊厳までも。
文章にすると息苦しい印象がありますが
物語に登場する人物は、それがあたりまえで、その社会を受け入れています。
主人公であるレイシーも例外ではなく
・鏡の前で笑顔の練習
・言葉遣いはいつも穏やか
・SNSで自他の評価を常にチェック
といった具合に評価のために、自分磨きを欠かしません。
この評価は5段階評価でして、スコアが高い(評価されている)人ほど社会からの待遇が良いです。たとえば、4.5以上だと、物件の価格を割り引けるなど
こんな感じで、評価の高さ = 生活の質 に直結した社会となります。
極端だけれども、なんだかあり得そうな未来の世界観ですよね。
本音とうわべ
みなさんは、この世界観をどう思いますでしょうか。評価のために行動が左右される。ゲーム感覚で楽しめそうって意見もありそうですし、管理されて嫌だって感想もごもっともだと思います。
わたしの所感は、気味が悪いでした。評価のために、行動が制限されるなんてまっぴらです。
映画『グッド・ウィル・ハンティング』でのセリフを思い出します。
自由は魂が呼吸するための権利だ
(引用:映画『グッド・ウィル・ハンティング』)
まさに魂の呼吸をSNSによって支配されているのですよー。
本作を考えるうえでのキーワードとしては、本音とうわべがあげられるかと思います
本音 → 本心から出た言葉
うわべ → 表面・外見・見かけ
とあります。
ランク社会の人物たちは、評価のためにうわべで生きているんですね。お世辞や同情、びっくりするぐらいのオーバーリアクション。
お互いに気分を害さないために、たとえ思ったことがあったとしても決して口に出さない
本音 < 評価 となるわけです。
では、評価が優先され、本音(魂)が抑圧された社会ではなにが犠牲になっているのか。うわべが評価のためにあるのであれば、本音はなんのためにあるのか。これを考えるために作中、本音で話していた人物を何名かあげ、本音を吐露する背景をみてみます。
・ライアン(弟)
→姉への愛情、「本当の自分と向き合え」
・スーザン(トラックでおっくてくれた女性)
→愛した旦那を喪う(スコアの差で治療が他者に優先された)
・「静かの海」のコスプレイヤー
→父への愚痴(趣味への愛情)
・監獄で一緒になった人
→社会への不満(があると推察できる)
こんな感じになるのかな。
それで本音は、大切なもの/こと、特別なもの/こと への愛のためにあるのだということを示しているように思います。
レイシーが大切にしていた人形ミスター・ラグはナオミとの時間があったという事実、愛(or友情)の証拠。つまりは、思い出であり、記憶そのもの。
本音かうわべかの違いは、
愛にまつわる記憶 ↔ 評価
古いものと新しいものとに換言も出来ます。
「ランク社会」では、現実においていかれてしまう精神を描いているように思いました。
物語がすすむにつれてレイシーの評価が急落していくさまが描かれる。そして、落ちきったあとにようやくレイシーが爽快に本音を吐きまくるラスト。わたしも一緒におなじ本音を叫びましたよ。
最高の作品です。
まとめ
わたしは、この作品をこのようにまとめたいです。
見苦しくても本当の自分であり続ける人生を肯定してくれる作品
なにか生きづらさを感じている人に観ていただきたい作品ですね。
ここまで読んでいただき、
ありがとうございました。
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