今回はAmazon Prime Videoオリジナル作品の映画『さよなら、僕のマンハッタン』をとりあげます。
監督はマーク・ウェブ。
わたしのオールタイムベストな映画『500日のサマー』の監督でもあります。
主演がカラム・ターナー。『ファンタビ』シリーズでは、ニュートの兄テセウスを演じておりますね。
物語の内容は、マンハッタンで暮らすひとりの青年(トーマス)の成長を描いたものです。20代のトーマスが年齢が一回りも二回りも違う大人にかかわりながら、1人の人間として自立していくさまを追っていきます。
監督がマーク・ウェブというだけあって、映るものすべてがオシャレでしたねー。500日のサマーではNYの街並みが美しかったですね、それをまた味わうことができます
ミュージックビデオも手掛ける監督ならではのセンスがにじみ出ているように思います。
また、男女関係や親子関係の人間ドラマを後味さっぱりに描く特徴のある監督さんだと思います。例にもれず、今作もそんな感じで素敵な映画でした。
それでは、感想をしたためていきます。
(※おおいに執筆者の主観がまじっていることをご留意ください)
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ジェラルドの存在、トーマスの妄想と行動
「常識で感情を押し殺すな」
映画『さよなら、僕のマンハッタン』ジェラルドの台詞
マンハッタンで暮らす青年のトーマスはキャリアや恋愛にくすぶっています。父に勧められたキャリアカウンセリングもすっぽかし、彼氏持ちのガールフレンドに依存的。これといって夢中に取り組んでいることはなさそうです。それなのに家族そろっての食事会ではNYで成功を収めた人々に対し、軽くなじっています。
自分の人生にちゃんと向き合っていないんですね。
そんななか、隣人となるジェラルドがあらわれます。そして、彼との交流をとおし、トーマスの行動に変化が生じてくる…って感じが導入です。
で、このジェラルドがこの映画の白眉だなと思っていまして、ジェラルドの哲学チックな台詞がいいんですよ。
もう本当に含蓄のある人生の教えをトーマスに語りかけるんです。
「常識で感情を押し殺すな」
そのなかでもこちらが、わたしが唸った台詞でして最高です。スーパーで買い物中にジェラルドが一緒にいたトーマスにさらっと言う台詞です。
常識 → 世間体、身近な人の価値観
だと考えられます。
トーマスは多分にこの”常識”にとらわれている人物で、自分の感情(意思)を晒すのが億劫になっているんですね。そこをとがめています。
感情や意思を表出しないということはどういうことでしょうか。そうしないことでどんなことがおこり得てしまうでしょうか。
他人の人生を生きることとなる…
と、わたしは思います
トーマスにとってはそれが尾行というかたちであらわれています。
中盤、父の不倫相手であるジョハンナを尾行するんですね。これが意味しているのはトーマスはジョハンナの道(=人生)を追っている。つまり、自分の人生を歩んでいないということになります。
また、尾行まえにガールフレンドから「待ってるだけの探偵みたいで退屈ね」みたいなニュアンスで揶揄されています。
探偵という仕事について(劇中の文脈において)考えてみると、他人の情報をあつめるために、身をひそめながらただ傍観者に徹する存在といえます。
こんな感じでトーマスは主体性をもって行動していないんですね。
しかし、「ジェラルドとの会話」「ジョハンナへの愛情」により、だんだんとトーマスが主体的になります。
この映画で描いているのは、こういうことかと思います。
妄想してばかりの傍観者が、
主体者となり行動しだすまでの物語
”常識”にまさる自分の感情を尊ぶ愛しさを感じました。
『500日のサマー』との共通点
マーク・ウェブ監督の前作『500日のサマー』では、トム・ハンセンという主人公がサマーに恋する500日が描かれています。トムもなかなか不器用な男性でして、『さよなら、僕のマンハッタン』のトーマスと似ています。
ふたりの共通点をあげることで、今作の魅力をより伝えられればと思います
まず、どこが似ているのかというと…
主体性の欠如ですね。
トムもトーマスも基本、受け身です。
トーマスがジェラルドに「妄想はよくない」と言われるシーンがあります。そして、トムも被害妄想おおめです。
この共通点からいえることは、どちらも妄想していてばかりで、自らの意思で決める”行動”に億劫なところ。なので、両作品ともそんな主人公が成長し、自律していくさまが物語の根幹となります。
そして、共通する主人公と同じように、ヒロインにあたるジョハンナとサマーも対人交流の姿勢が似ています。どちらとも主人公とは逆に行動的であるということ。それと、人間関係における諦念がうかがえます。
ジョハンナは「わたしはすべてに無関心よ」と言っています。サマーは心情描写に「愛したものは2つだけ、1つは自分の長い黒髪、そして髪を切り落としても何も感じないこと」とあります。どちらも心に癒えないものを抱えているんですよね、美しい。
まとめると…
『さよなら、僕のマンハッタン』と『500日のサマー』、マーク・ウェブ監督のフィルモグラフィには、億劫男と無関心女のボーイミーツガールものとしての共通点が見出せます
そして、人物全員に、そこはかとない哀愁が漂っています。その哀愁を後味よく、さっぱり浄化させてくれるのがマーク・ウェブ監督映画の特徴ですかねー。
まとめ
今回はマーク・ウェブ監督作品『さよなら、僕のマンハッタン』をとりあげました。
・”行動”が億劫になっている人
・美しい街並みが好きな人
におすすめです。
ここまで読んでいただき、
ありがとうございました。
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