【映画】『(500)日のサマー』トム&サマーのまなざし【伝説の95日目】

(C)2009 TWENTIETH CENTURY FOX

映画『(500)日のサマー』の感想/紹介記事となります。

わたしの史上最高の映画でして、中学生の頃にはじめて観て以来倍近くは生きてきましたが、この思いが揺らいだことがありません。

当時はただ直感的に好き、としか言えなかったのですが、何度もなんども観ていくうちに、最近わたしなりにこの感動が少し整理できたと思っております。

この記事では、映画『(500)日のサマー』の魅力を共有していきたいと思いますー。

(※ネタバレを含みます、おおいに執筆者の主観がまじっていることをご留意ください)

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あらすじ・解説

建築家を夢見つつもグリーティング・カード会社で働くトムは、社長秘書として入社してきたサマーに一目ぼれをする。運命の恋を信じるトムは果敢にアタックし、遂に一夜を共にするのだが、サマーにとってトムは運命の人ではなく、ただの「友だち」でしかなかった。そんな、トムとサマーの500日の出来事を軽快に描くビター・スウィートなラブコメディ。主演は「G.I.ジョー」のジョセフ・ゴードン=レビットと「ハプニング」のズーイー・デシャネル。監督はCMやミュージック・クリップなどで活躍する映像作家のマーク・ウェブ。

引用:映画.com

「恋人」を求めるトム。
「友人」とこだわるサマー。

ふたりの関係を、時系列ばらばらの500日として描いています、斬新です。

物語が一直線にすすんで、起承転結を楽しむ映画とは違い。500日間のうち、ある1日のある部分を一つ一つ描いていく。

過去を思い出す感じと似ているんですよね。いい思い出、わるい思い出。人はそういうものを想起し、郷愁に浸るか、悔恨をする。

トムとサマーの500日が想起されるように描かれるのは、記憶(物語)を思い返し、あの時なにがあったのかを理解することと似ています。わたしたちに、トムとサマーの500日を俯瞰させることで、「恋人」「愛」とはなんたるかの”解釈”をせまる映画の構造になっていると思うんです。ある種セラピー的な感じ。

冒頭のナレーションに「恋物語ではない」とあるように、この映画は、”愛について”を知るためのものなんじゃないかと思います。

運命の愛を信じるトム。
愛は絵空事と考えるサマー。
ふたりの対峙を観ることに、どんなメッセージがあったのでしょうか。トムとサマーの人柄についてを記し、そのあとにこの映画のメッセージを考えていきます。

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トムと運命

写真:Interfoto/アフロ

トムは「運命」の人です。

運命 → 人間の意志にかかわらず、身にめぐって来る吉凶禍福。めぐり合わせ。

自分の意志ではなく、神様よろしくな運命に誘われたいと考えているんですね。
「僕に運がある世界なら…」(吹き替え)といった発言をしているように、運任せで生きている感じです。

運任せ ⇒ 主体性の放棄

自分がサマーのことが”好き”という意思があると自覚しながら、そのことをサマーに伝える…という行動にうつすための主体性が乏しいんですね。

また、このことはサマーへの愛に限らず、トムにとって、もうひとつ大切な”好き”である建築家の夢への行動に関してもおなじことが言えます。自分の”好き”を自覚しながら、その道をすすまず、くすぶっている、行動できないでいる

トムには建築家の夢があるということが、重要なポイントです。

トムの2つの”好き”
・サマー
・建築家の夢
であります。

運任せで自ら行動をしないでおきながら、いっぱしの”好き”はある。そんなトムがサマーに恋をし、「友人」として付き合い始めます。でも、ちゃんと腹を割って”好き”が言えないトム、「恋人」になりたいと言えないトム。なぜなら、主体的に行動しないからですね。

もうね、わたし(執筆者)が中学生の時に、この映画を直感的に好きになった理由のひとつがこれですよ。わたしがめちゃくちゃトムだった。これに尽きます。

だからこそ、つぎに紹介しますサマーに惹かれていたのかもしれません。

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サマーと自由

(C)2009 TWENTIETH CENTURY FOX

サマーは「自由」の人です。

自由 → 他からの束縛を受けず、自分の思うままにふるまえること。

トムとの対比でみればわかりやすく、自由に行動しています。500日の間に2回の転職と、結婚をしていますからね。自由と自立に価値をおいていて、「自分でいたい」という発言からもサマーの人柄を垣間見ます。

運任せで主体的に行動しないトムとは違い、自ら好きなことに正直に行動し、今ある喜びの瞬間瞬間に全身を賭している。そんな感じで、変化をいとわないサマーであります。

サマーが「恋人」になることを避けるのはなぜか。それは、自由を求めているからですね。

恋人という立場は、なにかをするときに、ある程度、”無条件”で応えなければならないということだと思います。
「話したいことがあるから会う」
→「恋人だから会う」
「人肌恋しいからセックスをする」
→「恋人だからセックスをする」
といった具合です。

「恋人」になるということは、一貫性という長期的な関係性を前提とします。ですので、サマーにとって 愛 ↔ 自由 なんですね。

そして、サマーはこのことを自覚していて、はじめからトムとの関係を「友人」だと再三確認しています。

ただ、注目したいのが、自由奔放で愛を絵空事と断じるサマーが
・映画『卒業』を観て号泣している
・ミリー(元同僚)の結婚式に出席している
ということ。

果たして本当にサマーは”愛”から自律しきれているのでしょうか。これはラストで回収されていますね。

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『(500)日のサマー』のメッセージ

トムの変化

トムとサマーの人柄を対比的にまとめますと
運命、依存 ⇒ 受動的なトム
自由、変化 ⇒ 能動的なサマー
となります。

運命に依存して、自ら決断をしないトムが、変化し続けるサマーに置き去りにされるのは当然の帰結です
トムは、サマーとの500日で主体的に行動することの尊さを学びます。

(456日~476日)のシークエンスは最高です。
受動的に生きていたトムが、変化し、建築家の夢のため動きだす

中学生の頃、わたしと重なるトムをとおして、わたしは変化の希求を確信したんです。だから、この映画が大好きなんだ!!そう思います、今でも!!

サマーのまなざし

サマーは自由奔放でトムの気持ちくみながらも結果的に無下にしている感も否めませんが、だからこその500日ですし、実質それより短い。そもそも、はなから「友人」と割り切っているわけですし、わたしはサマーに落ち度はないと思っております。

では、サマーはトムのことを微塵も顧みていなかったか、というと違います。サマーはちゃんとトムのもう一つの”好き”、すなわち”建築家の夢”を見抜き、見守っているからです。

というのも…
8日目にトムに建築家の夢があることを知り、そこですでに変化を促しているんですよね。
ほかにも…
建築のイラストに満たされたトムの部屋を訪れている事実や、「建築家としての素質もあるのよ」といった発言からトムの夢を理解している描写が散見されます。

そして何よりも伝説の95日目(私的)です。
95日目はトムとサマーの散歩デートが描かれています。そこでトムのお気に入りスポット(アンジェラスプラザ、ロサンゼルスの公園)に訪れます。

なにが良いかといいますと…
トムがサマー以外の”好き”である”建築について”を真心こめて語るんですね。サマーはそのトムの様子を嬉々として、興味津々に聴いているんですね。

サマーばかりを見つめていたトムのまなざしが、その時だけサマー以外をみつめていた。

はじめから、サマーのまなざしは、”トムの建築家の夢”に向けられていたんですね。

だから、サマーはトムを蔑ろにしていたのではないと思います。むしろ、トムよりトムを理解していた存在だったのではないでしょうか。

わたしの所感

この映画のメッセージをわたしなりに解釈しますと…
愛とは人の自由を許したうえで、それぞれの”好き”を自分ごとのように感じること
だったり、
運命とは解釈であり、それは自由におけるわたしたちの行動から生れる
などと、記しておきたいです。

自由でありつつ人を愛することの条件は、相手もまた自由な人であるということ。自由、自由している2人が揃ってようやく恋愛。

人の幸福を真に祈れるのは、身も心も自由になってからなのかもしれません。サマーをみつめることができなくなったトムだからこそ、最後、サマーを祝福できたのでしょう。

「恋人になるのはイヤなの、誰かの所有物になるのは最悪(…)自分自身でいたいの」

映画『(500)日のサマー』サマーの台詞
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まとめ

わたしの史上最高の映画『(500)日のサマー』を紹介しました。

わたしがなぜこの映画が好きなのかも整理できて、たいへん充実した時間でした。

自分でもびっくりしたのですが、伝説の95日目を執筆のために観返したらこれまで以上に号泣してしまいました。直感的、感性的な”好き”を、整理(言語化)すると、それ以上の感動を覚えるのだなと実感しました。

映画の感想を記すのは、いいものですね。

・愛について考えたい人
・自由について考えたい人
・おしゃれが好きな人
・決断をしたい人
におすすめです。

ここまで読んでいただき、
ありがとうございました。

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