【映画】『ステイ』間に合わせたいんだ【マーク・フォスター監督作品】

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あらすじ

ニューヨークの有名な精神科医・サムの患者・ヘンリーは、ミステリアスな青年で、予知する能力を持っていた。ヘンリーは、3日後の21歳の誕生日に自殺すると予告。自殺未遂経験を持つサムの恋人・ライラは、そんなヘンリーに興味を抱く。

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所感

宛もなく歩き続けるのが好きだ。

自分のプロフィールの特技欄に書くことがないと、毎回困っていたけれど、「いつまでも、どこまでも散歩できる」って、これからは書くことにしようと思った。これまでの逡巡は、もう訪れることはないだろう。もう少し早く気づいていればよかったと思う。世の中、間に合わないことばかりだと思う。

鍵もスマホも持たないで、帰途の方角だけは気にかけて、瞳と足と心の赴くままに、未だ見たことのない風景のなかで、私を更新する。眼前に広がる街並みが、新規の刺激となって、体中にその手のホルモンが迸り、私を幸福にする。その時、感じる現実は、たしかにこの瞬間にあるものだけど、きっとこの恍惚とした感覚は、それだけではなし得なかった何物…多分それは過去と未来。それらによって生まれるのだと思う。

過去と現実と未来が馬のように駆け回り、私の心を領しているんだと思った。

消してしまいたい悲しい記憶はたくさんある。例えば、家の前に車があるだけで慄いていたあの時や、チームプレーが苦手なことを自覚せずに所属していたサッカークラブのあいつとか。練習中に受けた左脇腹と左肘のキズが今も消えずに残っている。過去に戻れるのなら、やり直してなかったことにしたい、そう思うことがしばしば。一方で、そうしたくない私も確かにいることに気づく。当然、よい思い出もあるからだ。残してきたからだ。私を通して誰かが幸せになる経験も確かにあったんだ。例えば、伏し目がちに微笑む素敵な表情をするあなたとか…。なんてことを思いながら私は私を更新する。

悔恨はなぜあるのか?その疑問に思いを馳せながら歩く。すると、懐かしい気持ちになったりもする。初めて踏み入れたその道で、懐かしいと感じる不思議。郷愁は希望に繋がってるのかもしれないと、よくわからないことを口ずさんだこともあったっけ。悔恨と郷愁と希望が馬のように駆け回る。この恍惚があるのだから、人生捨てたもんじゃないと思った。生きていこうと思える。

だからこそ、やはり死は怖い。

悔恨や希望といった心の所業を断念するのはイヤだ。足りない、もっと欲しい、諦めていない、許してほしい、生きていたい、生きていてほしいと思う。できる限り、間に合いたいんだ。「意味がない…」と言うかもしれない。だけど、そんな理性で一蹴できるほど、人は強くない。心は美しい。愛を伝えたい。

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