昔から映画が好きだったのでよく観ていました。そして観るでけでなく”読む”、”聴く”、”観る”の映画批評を堪能するのも好きです。
雑誌やら、ラジオやら、最近だとyoutubeなどで映画にまつわるレビューを拝見し、映画を観ることで得られる楽しさに+して批評から得られる映画の深みを感じる。この営みがスタンダードな執筆者です。
なので映画批評ができる方には憧れとともに敬意があります。
そんなわたしが今、ブログを運営している。映画のことを主に記していこうと目論んでいます。そして思うようになりました、これを機に、わたしも「感想」ではなく「批評」を試みたい、と。
そんな気持ちで手に取りましたのが…
書籍 『「感想文」から「文学批評」へ』(著)小林真大(出)小鳥遊書房
目的は映画批評のための勉強ですが、こちらは文学批評の本となっております。まあ類推です、アナロジーともいいますね。
で、全体的な内容は、批評の書き方ではなく、批評のスタイルと歴史を学ぶことができるものとなっていました。ハウツー本ではなく、教科書的な書籍って感じですね。
今回は、わたしの記録として、あわよくば紹介として、したためます。
(※おおいにブログ運営者の主観がまじっていることをご留意ください)
批評とはなにか&内容の全体像
「批評」とは…
物事の価値を判断すること
と記されています。
「批」って「批判」を連想するから否定的な感じありますよね。でも、比べるというニュアンスのものなんですって。
比べて、良い悪いを決めて、価値をつける。それが批評です。
この本は、その批評、おもに文学批評の歴史や人物、潮流が丁寧に解説されており、同時に批評のスタイル(型)をカテゴライズして、文学批評誕生の背景を追いながらツールを知ることができます。
文学批評のスタイルは何に着目しているかで違って、本書では5通りに区分されています。
作家論(作者に着目)
ニュークリティシズム(作品に着目)
構造主義(作品に着目)
イデオロギー批評(作者に着目)
読者論(読者に着目)
それぞれ、ちょーザックリまとめます。
作家論
作者の”人生”、”環境”、”意図”を存分に照らし合わせつつ、作品を批評する
作品と作者を切っても切り離せないものとして、ふたつを同時に語ってく感じのスタイルですね。これって大変な労力いりますよね、環境はまだしも、人生と意図ってどうやって知るんだろ。インタビューとかできればいいだろうけど、古典だったら無理だし、ってことで文献にあたるわけだけど…限界ありますよねって思っちゃいました。
それでこの作家論に対して、ロラン・バルトっていうフランスの哲学者が批判をします。著書に「作者の死」っていう論文を発表。タイトルからわかるように、作品の批評に作者を想定しないやりかたを主張。
作者の死、けっこうショッキングな文言ですが、なんとなく頷けます。
わたし映画観る時とか、監督が○○だからこの作品は○○なんだよねっていうのが、なんか違う感じするときありますし、それに近いことかなって思いました。
ニュークリティシズム
作品の「言葉の分析」を徹底し、”形式”の理解に努める批評
作者の意図でも、読者の解釈でもなく、作品の形式に注力するスタイルです。
アメリカ南部の頭いい人たちが、北部の個人主義潮流に反発するかたちであらわれたもので、詩の批評に重点がおかれていることがポイントのようですね。
形式…難しいですね。形式の違いがいかに、作品の良し悪しを左右するかをみていて、作品単体の独自性をに懇切丁寧に向き合う批評スタイルって感じ。
イギリスの詩人T・S・エリオットの影響がおおきいみたいです。
構造主義
作品を徹底的に要約し、構造的な普遍性を見出そうとする批評
先述しましたロラン・バルトはこの派閥。言語学を基礎として、文学を科学的に迫ろうとしたスタイルって感じ。
ロラン・バルトさんは…
物語を機能(動詞的な要素)と指標(形容詞的な要素)に収束させることができると言って、演繹法を用いて、物語に法則性を見出そうと頑張ったようです。
感受性やら神秘主義やらとでお高くとまってた知識人にのみ許されていた批評という高尚な営みを、庶民的なものへと一般化した感じ。
うーん、抵抗ありますね。文学に法則性かぁって思っちゃう。
イデオロギー批評
作品の背後にある社会的、政治的、経済的なイデオロギーを解き明かす批評
作品には、作者のイデオロギーすなわち社会的背景とかが往々に反映しているよねって観点から語る感じ。
先述しました作家論と似てるかなって思うんですけど、こっちは作家だけでなく、当時の社会全体もとらえつつ批評するって感じで視野がひろいイメージですね。
「労働者」→マルクス主義批評
「女性」→フェミニズム批評
「民族」→ポストコロニアル批評
みたいな感じです。
この批評スタイルが一番難易度高い感じしますね。やっぱり批評家ってなると歴史とか宗教とかの知識ってマストのようです…。
読者論
作品の意味を読者の解釈に委ねる批評
みんなちがってみんないい的なスタイルがある程度許容されたスタイル。一番しっくりきて、簡単そうですよね。
キーワードとして覚えたほうが良さそうなのが…
ヤウスさんの「期待の地平」。
作品にふれるとき、まったくの0情報はありえない。だれしもが偏見や期待を抱いて作品に臨む。たとえば、宣伝とかビジュアルとかから想像したり、似たような作品とかを比べたり…。
そのうえで、期待を裏切る作品=良い作品
ってしたようです。
作品にふれることで、いままでにない価値観を獲得することができる。それが大切だってヤウスさんは主張したみたい。
うんうん、いいじゃない。
まとめ
批評家は、作品に価値判断をすることで、価値観を多様化させることができる
批評にも、いままでいろいろな人がたくさん理論を積み上げてきたんですね。素敵です。
文芸批評に関してが大半でしたが、わたしのような映画批評を目指している人間にも、十分参考になる内容でした。
個人的には読者論がとっつきやすそうです。
あと、すごく重要なこととして…
感想 ⇒ 感情を伝える、主観性
批評 ⇒ 理性で伝える、客観性
という部分。
大多数の人がうなずける批評文。つまり、普遍的な価値基準の提示が、批評において大切だということを学びました。
批評に興味のある方には、ぜひ手に取っていただきたい書籍です。
ここまで読んでいいただき、
ありがとうございました。
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