
今回は、私が大好きなホラー映画を4本厳選しました!
ホラー映画と一口に言っても、その恐怖の形はさまざまです。幽霊や怪物といった超自然的な存在だけでなく、私たちが生きる日常のすぐ隣にある「人間の狂気」や「不条理な現実」こそが、何よりも深いトラウマを植え付けることがあります。
ぜひ夜に鑑賞する映画の参考にしてみてください。
ゴーストランドの惨劇

あらすじ・解説
人里離れた叔母の家を相続し、そこに移り住むことになったシングルマザーのポリーンと双子の娘。姉のヴェラは、奔放で現代的な少女。一方妹のベスは、ラヴクラフトを崇拝する内向的な少女。双子の姉妹ながら、性格は正反対だった。新居に到着したその日の夜、突然の惨劇が一家を襲う。2人の暴漢が家に押し入ってきたのだ。しかし、娘を守ろうとする母は必死に反撃し、姉妹の目の前で暴漢たちをメッタ刺しにする―。あの惨劇から16年後。ベスは小説家として成功したが、ヴェラは精神を病み、今もあの家で母と暮らしていた。久しぶりに実家に戻ったベスを母は迎え入れるが、 ヴェラは地下室に閉じこもっていた。そして、ベスに向かって衝撃の言葉をつぶやく―。
Filmarks
執筆者memo
好きなホラー映画を一本おしえてと言われたら真っ先にあげるのが本作。四大フレンチホラーの一角『マーターズ』を手がけたパスカル・ロジェ監督・脚本による現実と幻想の交じり合う物語。
屋敷と人形、狂気と奇怪などなど、画面を埋めつくすゴシックの趣が、暗く寂れた空間の醸成に寄与していて、主人公を襲う不条理により一層の恐怖を掻き立てています。建物内での悲惨な状況の描写に多くの時間が割かれるため息が詰まるうえ、恐怖の持続が長い。何よりも恐ろしいのが、その惨劇があまりに現実的すぎることです。本当に起こり得そう、という臨場感が本作の格式を高めているように思います。
寡作ながらフランスを代表するホラー映画監督パスカル・ロジェ。描くのは人間の精神の極限、限界。その先にあるかもしれない人間の真実に迫りたい、そのような切実さを感じます。露悪趣味を創作の動機としていないことは、彼の言葉からも窺い知れるところ。
今では、この作品の思想的・道徳的な側面について、まったく心配していません。いずれにせよ、それは私自身の倫理観に従って生まれたものだからです。私にとって重要なのは、それだけです。私はこの映画のすべてのショット、そして一枚一枚の静止画に至るまで、そのすべてに責任を持っています。
『マーターズ 4Kデジタルリマスター』リーフレットより
詳細情報
原題:Ghostland/Incident in a Ghostland
監督:パスカル・ロジェ
脚本:パスカル・ロジェ
出演:クリスタル・リード、アナスタシア・フィリップス
テイラー・ヒックソン、エミリア・ジョーンズ
制作年:2018年
制作国:カナダ、フランス
時間:91分
noteで本作に関する映画文筆をしたためています。もう少し知りたいという方はこちらもあわせてご覧くださいませ。
映画文筆|『ゴーストランドの惨劇』にみる現実と幻想が繰り返す世界
蝋人形の館

あらすじ
大学フットボールの試合を観戦しようと6人の若者がスタジアムを目指す。途中、キャンプをして一泊すると、翌朝車は誰かの仕業で走行不能に。声を掛けてくれた男に近くの街まで車で送ってもらうのだが、そこは異様な静けさに包まれていた。
Filmarks
執筆者memo
名作スリラー映画『エスター』やNetflixオリジナルのサスペンス映画『セキュリティ・チェック』、ハリウッドの超大作『ブラックアダム』など、非の打ち所がない作品を手がけてきたジャウム・コレット=セラ監督の長編映画デビュー作。蝋人形の館がそびえる辺鄙な町を舞台としたホラー映画です。
空虚な瞳、窪む顔面、溶ける身体……「蝋人形」を恐怖のアイテムとする発想が秀逸です。蝋のボディホラーと人形のゴシックホラーをかけ合わせた狂気と奇形のアンサンブル。グロいとか痛いとかだけでなく、人体の脆さや人間の儚さなども潜ませてあるからか、寂しさのようなものがほつほつと忍び寄ってきて、独特な恐怖体験を与えてくれます。
物語の筋書きはシンプルなのですが、主要となる人物が別行動をとったりするので、この人物はどのようなかたちで惨劇を迎えるのだろう、といった具合に興味が持続します。テンポよく場面が切り替わることもあり、マンネリがなく飽きない。また、人物たちを分断させる展開は、本作のテーマに関わる大切な要素なのかもしれません。
詳細情報
原題:House of Wax
監督:ジャウム・コレット=セラ
脚本:チャド・ヘイズ、キャリー・ヘイズ
出演:エリシャ・カスバート、カーリー・ジョーンズ、ジャレッド・パダレッキ
制作年:2005年
制作国:オーストラリア、アメリカ
時間:113分
ヴィジット

あらすじ
休暇を利用して祖父母の待つペンシルバニア州メインビルへとやってきた姉妹は、優しい祖父と料理上手な祖母に迎えられ、田舎町での穏やかな一週間を過ごすことに。しかし、夜9時半を過ぎると家の中には異様な気配が漂い、不気味な物音が響き渡る。恐怖を覚えた2人は、開けてはいけないと言われた部屋のドアを開けてしまうが……。
Filmarks
執筆者memo
『シックス・センス』『スプリット』のM・ナイト・シャマラン監督が、ホラー映画好きなら誰もが知るブラムハウス・プロダクションズと初タッグを組んで手がけた作品です。
姉弟が片田舎にある祖父母の家で一週間を過ごすという、何とも地味な設定なのですが、観ていてずっと楽しく面白い。ダルデンヌ兄弟の作品さながら、揺れるドキュメンタリックな映像。スリラーからコメディへと外れるカオス。でも、しっかり泣ける。このジャンルの横断が持続する面白さの大きな理由だと思います。ヒッチコックがホラー映画にはユーモアの緩和(コメディリリーフ)が必要だと語ったようですが、それに誠実に向き合った映画と言えるでしょう。
とにかく姉弟が健気で愛おしいし、祖父母の老化による不謹慎で毒っけのあるコミカルな言動が笑える。ちゃんと怖いところは怖いホラー映画だけど軽妙な演出が差し込まれていることもあって、爽やかな気持ちで鑑賞しつづけることのできる意外と稀有な作品だと思います。
詳細情報
原題:The Visit
監督:M・ナイト・シャマラン
脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:ディアナ・デュナガン、ピーター・マクロビー
エド・オクセンボールド、オリビア・デヨング
制作年:2015年
制作国:アメリカ
時間:94分
ファニーゲーム

解説
1997年のカンヌ国際映画祭で、そのあまりに衝撃的な展開に途中で席を立つ観客が続出。斬新なスタイルとショッキングなテーマ性でその年のカンヌの台風の目となったが、賞レースでは無視された。2001年、「ピアニスト」でカンヌのグランプリを獲ったミヒャエル・ハネケの、早すぎた金字塔的作品。
映画.com
執筆者memo
『ピアニスト』『愛、アムール』『ハッピーエンド』、ミヒャエル・ハネケ監督作品には、冷たい刃で心をえぐる鋭さがあります。あまり痛くはないけれど、確かに血は流れている。そして、ようやく傷だらけになっていた身体に気づき、人生の脆さを知る、世界の混沌をみる。
不条理で無意味。会話はあってないようなもの。第四の壁の打破。間延びした時間と巻き戻し。物語の破壊。邪道を突き詰めた先で差し出される、紛うことなき現実。本記事で紹介してきた映画には姉妹・兄弟・姉弟(=家族)が恐怖と対峙するという共通点がありました。恐怖を乗り越え退ける人間ドラマに感動することとなるわけですが、そのドラマ性を挫くのが本作です。映画なんかを観ている私たちを冷笑し、嫌に落ち着いたまなざしを向けてくる。これこそ、本当のホラーなのかもしれません。
詳細情報
原題:Funny Games
監督:ミヒャエル・ハネケ
脚本:ミヒャエル・ハネケ
出演:スザンヌ・ロタール、アルノ・フリッシュ、フランク・ギーリング
制作年:1997年
制作国:オーストリア
時間:108分
おわりに
エンターテインメントとしてのスリルを超えて、世界の混沌や人間の真実を覗き見せてくれるホラー映画たち。気になった映画があれば、ぜひ部屋を暗くして、その狂気の世界に没入してみてください。
映画関連の文章をnoteで書いています。
ご興味があれば、ぜひご覧ください。
ここまで読んでいただき、
ありがとうございました。

コメント