映画『ネオン・デーモン』死の間際|ニコラス・ウィンディング・レフン監督

(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

(※ネタバレを含みます。ご注意くださいませ。)

死の間際、思い出される記憶は何だろう、どんな情景が浮かび上がるのだろう。生の世界にも死の世界にも属さない、微睡が際限なく引き延ばされたようなところで、もう一度、束の間の再会を果たすことができるのだろうか。

美しいものの破滅や衰亡、最果て。大切にしてきた時間が脆くも崩れ去り、消え失せるさま。自然の摂理からは逃れられないと、身をもってついに確信する人間の、その双眸が、ある世界の幕切れとともに儚くも閉ざされていく。銀幕を通してそうした光景と対峙するたびに、快い感情に満たされる。なぜなら、終焉を目の当たりにすることは、絶望に打ちひしがれる者に捧げられる激励になると思うからだ。死にゆく人間の哀愁と諦念の漂う面持ちが、来たるべき安寧を報せると同時に、夢に破れ、愛に見放され、喪い続ける生者へ、生きる感動を問いただすかのようにうつる。

ジェシーの最期。広がりゆく血を背に遠く煌めく星々を眺めるそのさまは、津原泰水著『綺譚集』の一編「玄い森の底から」における最後の一節を彷彿とさせた。

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